「奉行クラウドを検討することになったが、どの製品が自社に合うのかわからない」
「見積もりを依頼したいが、何を伝えればよいか整理できていない」
会計、給与、販売管理のシステムを見直すとき、つい製品の機能比較から始めたくなります。
ただ、先に確認したいのは、今の業務がどう流れていて、どこで手作業や確認待ちが起きているかです。
この記事では、奉行クラウドの概要を整理したうえで、製品を選ぶ前に確認しておきたい5つの項目を紹介します。
社内の打ち合わせで書き込みながら使える資料も、記事の最後にご用意しています。
目次
奉行クラウドとは

奉行クラウドは、株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)が提供する、会計、人事労務、販売管理などのバックオフィス業務を扱うクラウドサービスの総称です。自社でサーバーを用意せず、インターネットを通じて利用します。
企業規模と用途でラインナップが分かれている
「奉行クラウド」とひとくくりに呼ばれますが、公式には企業規模と用途でラインナップが分かれています。
| ラインナップ | 位置づけ | 主な対象 |
|---|---|---|
| 奉行iクラウド | SaaS型の基幹業務システム | 小規模・中小企業 |
| 奉行V ERPクラウド | SaaS型のERP | 中堅・成長企業 |
| 奉行クラウド Edge | 従業員が行う申請などの業務サービス | すべての企業 |



中小企業でまず検討対象になるのは、奉行iクラウドです。この中がさらに業務ごとのサービスに分かれています。
- 会計・税務:勘定奉行iクラウド、固定資産奉行iクラウド など
- 人事労務:給与奉行iクラウド、総務・人事奉行iクラウド など
- 販売・仕入・在庫:商蔵奉行iクラウド など
基幹業務システムとは、会計処理、給与計算、販売管理など、会社の重要な記録と処理を担う仕組みのことです。
つまり、「奉行クラウドを入れる」と言っても、実際にはどの業務を、どこまで対象にするかを決める作業になります。
ここが決まらないまま製品比較を進めると、判断の軸が定まりません。
参考: OBC 奉行クラウドサービス一覧(2026年8月確認)
製品選びから始めると、手作業が残ることがある
基幹業務システムが担うのは、会社の重要な記録と処理です。一方で、その前後には、紙やExcelでの情報集め、不備の確認、転記、集計表への貼り直しといった作業が残りやすくなります。
たとえば、月に80枚の請求書を発行している会社で、販売管理システムに入力した内容をExcelの売上集計表へ貼り直し、さらに会計へ手で起票していたとします。1枚あたり3分の転記でも、月に4時間が転記だけに使われます。
システムを新しくしても、転記が必要な理由(集計表が別にある、会計と連携していない)が変わらなければ、この4時間は残ります。
導入の目的は、今の作業をそのまま新しいシステムへ移すことではありません。必要な処理を守りながら、なくせる手作業と、残すべき確認を分けることです。
奉行クラウド導入前に整理したい5つのこと
1. 現在の業務の流れ
対象業務の始まりから終わりまでを並べます。請求業務なら、「受注内容の確定」「納品の確認」「請求書の作成」「上長確認」「送付」「入金確認」「会計への反映」までが一つの流れです。
このとき、システムの中だけを見ず、その前後にある紙、メール、Excel、口頭確認も含めます。誰から情報が届き、誰が確認し、次に誰へ渡すのかまで書くと、作業が止まりやすい場所が見えてきます。
2. 元データとマスター
取引先、商品、部門、社員など、繰り返し使う基本情報を「マスター」と呼びます。同じ取引先が複数の表記で登録されていたり、部門コードが部署ごとに違っていたりすると、新しいシステムへ移しても集計や連携で困ります。
システム設定の前に、どのデータを正しい情報として扱うか、誰が追加・修正するか、重複や古い情報をどう整理するかを決めておくと、導入後の手戻りを減らせます。
3. 必要な帳票・締め日・確認期限
日々の入力だけでなく、最後に何を出す必要があるかを確認します。請求書、支払一覧、試算表、給与明細、在庫一覧などを洗い出し、あわせて月末締め、給与計算日、支払日、経営会議など、数字が必要になる期限も並べます。
帳票の見た目をそのまま再現することが目的ではありません。その帳票を誰が、何の判断に使っているかを確認します。使われていない帳票はやめる、同じ内容の集計表はまとめる、といった見直しもできます。
4. 担当者・承認・例外処理
請求金額を変更するとき、給与情報を修正するとき、取引先コードを追加するときでは、確認する担当者が異なります。通常の流れだけでなく、迷ったときに誰が判断するかを決めておきます。
特に整理したいのは、通常どおりに進まないケースです。
- 金額や数量が合わない
- 必要な情報が締め日までに届かない
- 以前の処理を取り消したい
- 連携や取込でエラーが出た
- 担当者が不在で承認が止まった
例外時の手順まで決めておくと、運用開始後に「結局、詳しい人に聞かないと進まない」という状態を防げます。
5. 移行するデータと残すデータ
過去のデータをすべて新システムへ移せば安心、とは限りません。移行量が増えるほど、確認と修正の負担も増えます。
取引中の案件、当期の仕訳、現在の社員情報、未入金の請求など、運用開始時に必要なデータを優先し、古いデータは旧システムや保管ファイルで参照できるようにする方法もあります。
移す対象期間、移行前に整える項目、移行後の照合方法、旧データの保管場所と閲覧期限を決めておくと進めやすくなります。
なお、会計、税務、労務に関する保存期間や取り扱いの判断は、税理士、社会保険労務士などの専門家へご確認ください。
5項目のふりかえり
ここまでの内容を、一度まとめて確認します。
| # | 整理すること | 決まっていますか |
|---|---|---|
| 1 | 現在の業務の流れ | 始まりから終わりまでを、紙・メール・Excel・口頭確認も含めて書き出せているか |
| 2 | 元データとマスター | どれを正しいデータとするか、誰が追加・修正するかを決めているか |
| 3 | 必要な帳票・締め日 | 出すべき帳票と、その用途、数字が必要になる期限を並べているか |
| 4 | 担当者・承認・例外処理 | 通常どおり進まないときに、誰がどう判断するかを決めているか |
| 5 | 移行するデータ | 移す対象期間と、旧データの保管方法・閲覧期限を決めているか |
空欄が多くても問題ありません。「決まっていないことがどこか」がわかれば、この段階では十分です。
書き込める版もあります
社内の打ち合わせでそのまま使えるよう、印刷して書き込める版を用意しました。上の5項目を10項目のチェックリストに分けたうえで、記事にはない次の2つを加えています。
- 対象業務の流れを、1行ずつ書き出す記入欄
- 業務ごとの件数と時間を書き出し、どこから手をつけるかを決めるための表
小さく始めるための4ステップ
最初から会計、給与、販売管理のすべてを見直すと、関係者と決めることが増え、判断が止まりやすくなります。まずは負担の大きい業務を一つ選びます。
- 毎日または毎月、手間がかかっている業務を一つ選ぶ
- 二重入力、確認待ち、集計のやり直しを見つける
- 基幹業務システムが担う処理と、その前後の業務を分ける
- 少量のサンプルデータで、入力、確認、帳票、修正まで試す
テストでは、金額違い、未入力、取消などの例外も試します。担当者が実際に操作し、無理なく続けられるかを確認してから対象を広げます。
3の「基幹業務システムとその前後を分ける」考え方は、kintoneなど現場側の仕組みを併用する場合も同じです。この点は別の記事で改めて取り上げます。
まとめ:製品が決まる前でも、業務整理は始めらる
整理した内容があれば、デモで確認する点や見積もりの前提が具体的になります。導入後に残る手作業も、先に見つけられます。
Hachidai Lab.は、製造業の現場と、経理・総務などバックオフィス実務の両方を見てきた立場から、業務の整理と運用の定着までをお手伝いしています。{2026年8月:要確認}にOBCビジネスパートナーとなり、奉行クラウドについてもご相談を承れるようになりました。
ご相談の際は、次のものがあるとスムーズです(同じ一覧が、先ほどの書き込める版にも入っています)。なくても、口頭でうかがいながら整理できます。
- 現在使っている帳票(請求書、支払一覧、試算表などの現物または画像)
- 集計に使っているExcelファイル
- 月次の締め日・支払日がわかるもの
- 困っている場面のメモ(どの作業に、月どれくらい時間がかかっているか)
製品が決まっていない段階でも、現在の業務からご相談ください。