「せっかくkintoneを導入したのに、入力しているのは一部の人だけになっている」 「アプリはたくさん増えたけれど、結局Excelや紙の管理も残ったまま」 「便利になるはずだったのに、現場からは『かえって入力の手間が増えた』と言われてしまう」
バックオフィスや現場の業務改善を担当されている方のなかで、こうしたお悩みを抱えている方は少なくないのではないでしょうか。
日々の通常業務を回しながら、少しでも仕事を良くしようと新しいツールを取り入れるのは、本当にエネルギーのいることです。うまくいかないと「うちの現場には合わなかったのかな」「自分の作り方が悪かったのかもしれない」と、担当者お一人で抱え込んでしまうケースも多いと思います。
ですが私は、kintoneがうまく定着しないのは、現場や担当者の方のせいではなく、ほんの少し「進め方の順番」が噛み合っていないだけだと感じています。
kintoneは、自社の仕事に合わせて業務アプリを作れる柔軟なクラウドサービスです。ただ、最初から完成形を目指して作り始めると、かえって現場にとって使いにくい仕組みになってしまうことがあります。
大切なのは、最初から完璧な設定をつくろうとするのではなく、実際に使いながら直していくことですね。まずは小さく始めて、現場に合わせて育てていく。そういう進め方が一番無理がないという考え方です。
▶ kintoneの基本的な特徴については「kintoneとは?Excel・会計ソフトとの違いと、無理なく小さく始める考え方【2026年版】」もあわせてご覧ください。
目次
kintone導入がうまくいかない原因は、ツールより「進め方」にある
kintoneは、導入すれば自動的に業務が整うような魔法の箱ではありません。私自身、非エンジニアとして現場の業務改善に向き合ってきたなかで、最初はうまくいかず何度も遠回りをした経験があります。
たとえば、現場の担当者がどんな順番で書類を見ているかを確認しないまま画面を作ってしまったり、良かれと思って入力項目をたくさん増やしてしまったりしたこともありました。
どれだけ便利な箱を用意しても、実際に毎日手を動かす人が「ここに入力すると、自分の仕事がこう楽になるんだな」と実感できなければ、どうしても入力は後回しになってしまいます。
「どんなアプリを作るか」を考える前に、まずは「どの仕事の、どの困りごとを減らしたいか」を一つだけ言葉にしてみる。一歩目としては、ここが一番踏み出しやすいと思います。
中小企業でよくある5つのつまずきパターンと見直し方
まずは、現場でよくお見かけする5つのパターンと、それぞれの見直しの方向性を表にまとめました。
| パターン | 現場で起こりがちな状態 | 見直しの第一歩 |
| 1. 目的が曖昧なまま作る | アプリを作ること自体がゴールになり、入力後の活用が見えない | 「どの困りごとを減らすか」と「入力後に見る一覧」を一つ決める |
| 2. 最初から多くの業務を詰め込む | 画面が縦に長く複雑になり、どこに何を入れるか迷う | 「このアプリは何を管理するか」を一文で言える範囲に絞る |
| 3. 現場の入力負担・二重入力が増える | 管理側の集計都合で項目が増え、Excelや会計ソフトと二度打ちになる | 既存ツールとの役割を分け、一度入力した情報を二度入力しない流れにする |
| 4. 特定の担当者しか設定が分からない | 詳しい人が休むと修正できず、なぜその設定にしたか分からなくなる | アプリの目的や変更メモを残し、声を拾うルールを共有する |
| 5. 入力・更新のルールが決まっていない | データの鮮度がバラバラで信用できず、結局口頭や電話確認に戻る | 「誰が・いつ・どの状態まで更新するか」と例外時の動きを揃える |
それぞれのパターンについて、現場でよくある場面と一緒に見ていきましょう。
パターン1|目的が曖昧なままアプリを作る
「まずは社内のDXを進めたい」「紙やExcelをなくしたい」といった大きな目標からスタートすると、いつの間にか「アプリを作ること自体」がゴールになってしまうことがあります。
たとえば、次のような場面はないでしょうか。
- 毎日日報を入力しているけれど、誰もそのデータを見返していない
- 案件情報を登録したあと、結局いつもの会議資料を別のファイルで作り直している
- 現場から「これ、何のために入力しているんですか?」と聞かれて答えに詰まってしまう
こうした状態になると、現場はどうしても「仕事が増えた」と感じやすくなりますよね。
もちろん、まずは試しにアプリを作ってみる行動力そのものは、とても素晴らしいことだと思います。ただ、実際に現場で使ってもらうためには、「案件の対応漏れを防ぎたい」「申請が今誰のところで止まっているかすぐ分かるようにしたい」など、身近な困りごとを一つに絞ってみるのがよさそうです。
入力したあとに「どの一覧画面を見れば、みんなの確認作業が楽になるのか」までセットでイメージしておくと、現場にも目的が伝わりやすくなると思っています。
パターン2|最初から多くの業務を詰め込む
意気込んで導入を進めるほど、「あれもこれも一つのアプリで管理したい」と項目を増やしてしまいがちです。これまで使っていたExcelの列をそのまま全部kintoneへ移した結果、画面が驚くほど縦に長くなってしまった、という経験はありませんか?
たとえば、こんな状態になりやすいケースです。
- 画面を何度もスクロールしないと保存ボタンや必要な項目にたどり着けない
- 昔は使っていたけれど、今は誰も使っていない予備の項目まで並んでいる
- 必須項目が多すぎて、少しメモを残したいだけなのに登録できない
最初から完璧な台帳を作ろうとすると、作る側も大変ですし、入力する側も画面を開いた瞬間に疲れてしまいます。
最初は「このアプリは何を管理するものか」を一文で説明できる範囲に絞ってみてはいかがでしょうか。入力項目も、まずは今の業務を前に進めるために最低限必要な5〜10個程度から始めて、足りないものがあれば後から足していく。kintoneは後から項目を追加したり並び替えたりしやすいツールですので、まずは小さく始めて、現場に合わせて育てていく進め方が合っていると思います。
パターン3|現場の入力負担や二重入力が増える
管理する側が「あとで集計したいから」と欲しい情報だけを基準に画面を作ると、現場の入力負担はどうしても増えてしまいます。また、これまで使っていたExcelや会計ソフト・販売管理システムとの関係を整理しないままkintoneを追加すると、かえって二重入力が増えてしまうケースも少なくありません。
たとえば、日々の業務でこのような二度手間が起きていないでしょうか。
- 営業がkintoneに売上情報を入力し、経理がそれを見ながら会計ソフトへもう一度手入力している
- 現場は紙の報告書を書き、事務担当者がExcelとkintoneの両方に転記している
- 同じ取引先の住所や担当者名を、複数のアプリやシステムにそれぞれ登録している
私たちが業務改善で一番大切にしたいのは、一度入力した情報を、二度入力しなくていいようにすることです。入力を減らし、考える時間を増やすことこそが、仕組み化の目的だと思っています。
そのためには、「誰が、どの場面で、何を入力しているか」を一度書き出してみるのがおすすめです。kintoneで入口を整えて、専門システムで処理する。このように役割を整理していくと、現場の負担を増やさずに全体の流れをスムーズにできるのではないでしょうか。
パターン4|特定の担当者しか設定が分からない
社内でkintoneやITに詳しい方お一人にアプリの作成や修正を任せきりにしてしまうのも、中小企業でよく見られるお悩みです。最初はスピーディーに形になるのですが、時間が経つにつれて次のような困りごとが出てきやすくなります。
- 担当者が異動や退職、お休みで不在になった途端、誰も設定を触れなくなる
- 「なぜこの項目があるのか」「どこかの集計につながっているのか」が分からず、怖くて修正できない
- 現場からの「ここを直してほしい」という要望が担当者一人に集中してパンクしてしまう
台帳は「作る」だけでなく、「壊さず、迷わず、安全に使い続ける」ことに大きな意味があると思っています。
最初から立派な設計書を作る必要はありません。アプリの説明欄や別のメモアプリに「このアプリの目的」「管理している人」「いつ・どこを直したか」を一行ずつ残しておくだけでも、安心感はぐっと変わります。あわせて、現場からの要望をどこに集めて、誰が優先順位を決めるのかという簡単なルールをチームで共有しておくと、お一人で抱え込まずに運用を続けやすくなるのではないでしょうか。
パターン5|入力・更新のルールを決めていない
せっかくアプリを作っても、入力するタイミングや更新する担当者が人によってバラバラだと、一覧画面を見ても「このデータは最新なのだろうか?」と不安になってしまいます。
たとえば、こんなすれ違いが起きているケースです。
- 完了したはずの案件が「対応中」のまま残っていて、結局電話や口頭で確認している
- 日付の項目に「来週中」と文字が入っていたり、金額の入れ方が人によって違ったりする
- 差し戻しや担当者が不在のときにどう動けばいいか決まっておらず、処理が止まってしまう
データが信用できなくなると、人はどうしても元の慣れた方法(口頭やメール、手元のメモ)に戻ってしまいますよね。
これを防ぐためには、操作マニュアルの前に「誰が」「いつ」「どの状態まで更新するか」という運用のお約束を揃えておくのが効果的です。また、普段どおりに進むときだけでなく、「確認者が不在のとき」「内容に不備があって差し戻すとき」といった例外の場面でどうするかを一言決めておくだけでも、現場の迷いは大きく減らせると思っています。
つまずきを避けるための4つのステップ
では、これからkintoneを導入したり、今あるアプリを見直したりするときは、どのような順番で進めればよいのでしょうか。Hachidai Lab.では、次の4つのステップで一歩ずつ進める方法をご提案しています。
1. 一つの業務と一つの課題に絞る
まずは関係する人数が比較的少なく、困りごとがはっきりしている業務を一つ選びます。「備品購入の申請がいま誰で止まっているか分かるようにする」「問い合わせの対応漏れをなくす」など、ゴールがイメージしやすいものが候補になります。
2. 現在の業務の流れを先に書き出す
いきなりkintoneの画面を開いて作り始めるのではなく、まずは今どうやって仕事が進んでいるかを紙やホワイトボードに書き出してみます。誰が情報を受け取り、何を確認して、次の人へ渡しているのか。そこで「待ち時間」や「同じことの転記」が起きている場所を探すのがポイントです。
3. 必要最小限のアプリで運用を始める
最初から現場のすべての要望を盛り込もうとせず、まずは業務を回すのに必要な最小限の項目と一覧画面だけでスタートします。複雑な自動計算や他システムとの連携は、まず基本の形が現場に馴染んで、本当に必要だと分かってから検討しても決して遅くありません。
4. 実際に使った人の声をもとに見直す
運用を始めたら、現場で入力している方に「入れにくい項目はないか」「迷うルールはないか」を聞いてみます。失敗してもよい場所で何度でも試せるのがkintoneの良さです。定期的に声を拾う場をつくり、優先順位をつけて少しずつ直していくことで、自社にぴったりの仕組みに育っていきます。
すべてをkintoneにしない|Excel・専門システムとの役割分担
ここで一つ、大切な視点をお伝えしたいと思います。それは、kintoneは柔軟で便利なツールですが、すべての業務に最適とは限らないということです。
もちろんExcelがだめだと言いたいわけではありません。ExcelにはExcelの良さがあります。自由なレイアウトで試算表を作ったり、少人数で手軽にデータをまとめたりする場面では、Excelの方がずっと扱いやすいケースも多いと思います。また、仕訳の計上や消費税の計算、請求・売掛管理といった専門的な処理は、会計ソフトや販売管理システムに任せる方が安心で確実です。
ですが私は、それぞれのツールの得意分野を組み合わせて「役割分担」をすることで、バックオフィス全体がぐっと楽になると考えています。
| ツール・システム | 得意な役割 | 現場での使い分けイメージ |
| kintone | 現場での情報収集・進捗共有・申請の入口 | 営業や現場が案件・申請・日報を入力し、対応状況を見える化する |
| Excel | 自由な集計・シミュレーション・少人数の管理 | 特定の資料作成や、定型化されていない柔軟な分析・試算に使う |
| 専門システム(会計・販売管理など) | 正確な計算・法対応・確定データの処理 | kintoneで整えたデータを受け取り、仕訳計上や決算・請求処理を行う |
すべてを無理にkintoneへ移すのではなく、「kintoneで入口を整えて、専門システムで処理する」。そして、ツール同士をつなぐときも、連携の目的は、システムをつなぐことそのものではありません。現場の二重入力をなくし、台帳を壊さず、迷わず、安全に使い続けるために役割を分けるという考え方です。
まとめ|まずは現場で回る小さな仕組みから
kintone導入でつまずいてしまう原因は、ツールの機能不足や現場のスキル不足ではありません。多くの場合、「最初から完璧なものを作ろうとして、目的や役割分担、運用のルールが整理しきれていないこと」から起こります。
まずは一つの業務に絞り、最小限の項目から使ってみる。そして、現場の声を聞きながら少しずつ直していく。そうやって「一度入力した情報を、二度入力しなくていい状態」を一つずつ増やしていくことが、結果として一番確実な近道になるのではないでしょうか。
業務改善は、最初から大きな仕組みを入れ替えることではなく、毎日の小さな手作業や迷いを一つ減らすこと。まずはそこからだと思っています。
無料相談のご案内
Hachidai Lab.では、アプリを作る前の業務整理から、導入後の見直し、また会計ソフトなどの専門システムとの役割分担・連携まで、バックオフィス実務者の目線で伴走支援を行っています。
- 「すでにkintoneを導入しているが、現場で使われない理由を一緒に整理したい」
- 「Excelとkintone、会計ソフトの二重入力を減らす方法を考えたい」
- 「どの業務から始めればいいか、まだ社内でもまとまっていない」
そのような段階でも、一つの選択肢として、考えてみてもいいのではないでしょうか。連携や構築の方法を決める前の段階からでもどうぞ。相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは今の現場の状況をお聞かせいただき、どこから見直せそうか一緒に整理するところからお手伝いします。
Hachidai Lab.(ハチダイラボ)
kintoneを活用した業務改善のパートナー。