「紙の伝票を整理して確認するだけで、あっという間に午前中が終わってしまう」
「Excelでの集計や会計ソフトへの転記で、入力ミスをしていないかいつも不安になる……」
「もっと良いやり方がある気はするけれど、今のやり方でなんとか回っているから、新しい仕組みを考える余裕なんてない」
月末月初の請求書の開封や内容確認、集まってくる経費精算書のチェック、そして会計ソフトへの仕訳入力。
経理の現場では、「とにかく期日までに間違えず終わらせなければ」というプレッシャーのなかで、目の前の業務をこなすことに精一杯になってしまうことが多いのではないでしょうか。
実は私自身も、バックオフィスの実務に携わるなかで、同じように手作業や確認の多さに悩んできました。
「なんとか回っている」という状態は、裏を返せば、現場の担当者の方の丁寧な確認や、忙しい時期の踏ん張りに支えられている状態とも言えます。
今回は、そんな日々の経理業務の「当たり前」を少しだけ立ち止まって見つめ直してみたいと思います。
忙しさの原因を個人の努力に求めるのではなく、ツールの役割分担という視点から、無理なく負担を減らす方法を探っていきましょう。
目次
経理の現場でよく聞く、紙・Excel運用の悩み
多くの中小企業では、現在も「紙」と「Excel」が経理業務の中心として活躍しています。
長年使い慣れたやり方には安心感がありますし、少人数であればそれで十分に回っているケースも多いと思います。
ただ、会社の成長とともに取引量や関わる人が増えてくると、少しずつ次のような悩みが増えてくることはないでしょうか。
- 過去の書類を探すのに時間がかかる
承認待ちの伝票や請求書が机に溜まり、「あのときの請求書、どこに閉じたっけ?」と探すだけで時間が過ぎてしまう。保管スペースの確保も悩みの種になりがちです。 - どのExcelファイルが最新かわからなくなる
共有フォルダの中に「最新」「最新_修正」「最新_最終」といったファイルが増えていく。どれが正しい数字なのか確認が必要になったり、古いファイルに上書きしてしまったりする不安がつきまといます。 - 前任者が作ったシートが「触れない領域」になる
昔作られた複雑な関数やマクロが、担当者の異動や退職とともに「中身がわからないから怖くて直せないもの」になってしまう。制度変更のたびに、手作業で調整することになるケースも少なくありません。 - 転記ミスへの不安とダブルチェックの負担
紙やExcelから会計ソフトへ手入力するとき、行ズレや数式の消去が起きていないか常に神経を使う。確認のためのチェック作業に、多くの時間を割くことになります。 - 紙の確認や押印のために出社が必要になる
パソコンがあればできる作業でも、「紙の請求書を見るため」「承認のハンコをもらうため」に出社せざるを得ない場面が残ってしまう。
たとえば、月末の忙しい日に限って「先月のあの支払いの内訳を教えて」と聞かれ、ファイルやバインダーをいくつも開いて探した、という経験はありませんか?
これらは決して、現場の担当者のスキルや注意力が足りないからではありません。
「紙やExcelがだめ」なのではなく、「ツールの得意なこと」と「今の業務の広がり」が少しずつ合わなくなってきているサインなのだと考えています。
「経理=簿記+Excel」という考え方を少し広げてみる
経理の実務では、「簿記の知識」と「Excelのスキル」の2つが大切だとよく言われます。
もちろん、Excelがだめだと言いたいわけではありません。ExcelにはExcelの良さがあります。
関数やピボットテーブルを使えば、複雑な集計やシミュレーションを自由自在に行うことができます。
私自身、実務のなかでExcelの柔軟さに何度も助けられてきました。
ですが私は、業務が少し複雑になってきたときこそ、Excelの関数をさらに難しくするのではなく、「データをどう集めて、どう残すか」というデータベースの視点を取り入れてみることが大切だと感じています。
Excelは本来、「個人の手元で計算や集計をする」「自由に表をつくる」ことにとても強いツールです。
一方で、複数のメンバーで同時にデータを入力したり、「誰が・いつ承認したか」という履歴を残したり、人によって見られる範囲を変えたりする業務は、少し苦手な面があります。
それぞれのツールの得意なことを整理してみると、違いが見えやすくなります。
| 比較のポイント | Excel(表計算ソフト) | kintone(業務データベース) |
| 得意な役割 | 手元での自由な計算、集計、シミュレーション | チームでの情報共有、データの蓄積、進捗の見える化 |
| 複数人での同時作業 | 競合や上書き保存の気遣いが必要になることが多い | 複数人で同時に開いて入力・確認しやすい |
| 承認ややり取りの履歴 | メールや口頭、別シートでの管理になりやすい | データごとにコメントや変更履歴、承認状況が残る |
| 権限のコントロール | ファイル単位の制限が中心(シート保護などは解除リスクも) | アプリ・データ・項目単位で細かく閲覧・編集権限を設定できる |
| 関連ファイルの管理 | PDFや画像は別フォルダに保存し、探す手間が発生しがち | 明細データと請求書PDF・領収書画像をセットで保管できる |
このように並べてみると、どちらが優れているかではなく、「そもそもの役割が違う」ということがわかるのではないでしょうか。
経理業務を「データベース」として考えると見えてくること
経理の仕事は、会計ソフトに仕訳を入力した瞬間から始まるわけではありません。
実はその手前にある、社内のやり取りにこそ多くの時間と手間がかかっています。
たとえば、日々の業務のなかでは次のような流れが繰り返されています。
- 営業や現場の担当者から、売上や経費の情報が上がってくる
- 上長が内容を確認して承認する
- 経理が証憑(請求書や領収書)と照らし合わせ、勘定科目などを判断する
- 会計ソフトへ入力し、支払いや入金消込を行う
この「1〜3」の段階が、紙やメール、個別のExcelファイルにバラバラに散らばっていると、経理担当者は毎回それらを集めて、整えて、打ち直すことになります。
つまり、経理の手間が増えている大きな理由は、「会計ソフトに入れる前の情報(入口)」が整っていないことにあるケースが多いと思います。
ここを「1件ずつのデータ(データベース)」として一箇所に集まる仕組みに変えると、景色がずいぶん変わってきます。
一度入力された取引先名や金額、添付された領収書の画像が、そのまま承認から経理チェック、そして会計ソフトへの連携までつながっていく。
「一度入力した情報を、二度入力しなくていいようにすること」
それが、経理業務をデータベースの視点で見直す一番の価値だと思っています。
Excel・会計ソフト・kintoneをどう使い分けるのか
「kintoneを入れるなら、今使っているExcelや会計ソフトはやめないといけないのでしょうか?」
ご相談のなかで、こうしたご質問をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、今あるExcelや会計ソフトを無理に手放す必要はまったくないと考えています。
大切なのは、それぞれのツールが得意な領域を活かして、役割分担をしてあげることです。
Hachidai Lab.では、次の3つの役割分担をおすすめすることが多いです。
| ツール | 経理業務における役割 | 具体的な業務イメージ |
| kintone | 情報の「入口」と「通り道」を整える | 現場からの申請・売上報告、請求書や領収書の添付、上長承認、入金状況の共有 |
| 会計ソフト(PCA会計など) | 専門的な「会計処理」と「決算」を担う | 仕訳データの計上、元帳作成、試算表・決算書の作成、税務申告への接続 |
| Excel | 柔軟な「分析」や「シミュレーション」に使う | 出力したデータを使った予実分析、経営会議用のグラフ作成、個別の試算 |
「kintoneで入口を整えて、専門システムで処理する」という考え方です。
会計ソフトは、法律や会計基準に則って正しく数字をまとめるプロフェッショナルです。
ただ、営業担当者や現場のスタッフ全員が会計ソフトの画面を開いて入力するのは、ライセンス費用の面でも、操作の難しさの面でもハードルが高いのではないでしょうか。
だからこそ、現場のみんなが使いやすいkintoneを「情報の入口」にする。
そこで承認まで終わったきれいなデータを、CSVやプラグインを使って会計ソフトへ渡してあげる。
そして、まとまった数字をじっくり加工・分析したいときは、使い慣れたExcelの出番にする。
このように役割を分けてあげると、どのツールも無理をせず、現場にとっても経理にとっても使いやすい形をつくりやすくなります。
どこから手をつける?経理の悩みを減らす4つの切り口
「考え方はわかったけれど、自社の場合はどこから手をつけるのがいいのだろう?」
そう感じられる方のために、現場のお悩み別に踏み出しやすい4つの切り口を整理してみました。
すべてを一度にやろうとする必要はありません。
「今、一番時間がかかっているところ」や「ミスが起きそうでヒヤヒヤしているところ」から見ていくのがよさそうです。
1. 経費精算や支払申請の「確認と転記」を減らしたい
毎月集まる紙の申請書や領収書ののり付け、Excelへの集計に追われているケースです。
申請フォームをkintoneに置き換えることで、スマホやPCから領収書の画像を添付して申請できるようになります。
自動計算で合計ミスを防ぎ、経理は「内容の確認」に集中できるようになるのが大きなメリットです。
2. 請求書の発行や、入金消込の確認をスムーズにしたい
「営業がExcelで作った見積・売上データを、経理がもう一度請求書システムに打ち直している」
「入金があったかどうか、営業から毎回電話やチャットで聞かれる」といったお悩みです。
案件情報や売上データをkintoneで共有しておけば、そこから請求データを作成し、入金確認の状況もリアルタイムで営業側と共有しやすくなります。
3. 会計ソフトへの「二重入力」をなくしたい(PCAクラウド連携など)
「kintoneやExcelにせっかく入力したのに、結局そこから会計ソフトへ手入力している」という場面です。
たとえば、PCAクラウド会計をお使いであれば、連携プラグインなどを活用することで、kintoneで承認された売上データや経費データをそのまま仕訳として連携する選択肢もあります。
転記ミスへの不安が減り、月次決算を締めるまでの時間を穏やかに短縮していくことができます。
4. 紙の回覧や「ハンコのための出社」を減らしたい
紙の伝票にハンコをもらうためだけに、承認者のデスクを探したり、出社したりしているケースです。
kintoneのプロセス管理(ワークフロー機能)を使えば、「いま誰の確認待ちか」が画面上でひと目でわかり、外出先や自宅からでも承認を進められるようになります。
最初から完璧を目指さず、小さく始めて育てていく
「システムの導入」と聞くと、何ヶ月もかけて分厚い設計書をつくり、最初からすべての業務を完璧につなぎ合わせる大掛かりなプロジェクトをイメージされるかもしれません。
ですが私は、バックオフィスの仕組みづくりにおいては、「まずは小さく始めて、現場に合わせて育てていく」やり方が一番馴染みやすいのではないかと考えています。
私のような非エンジニアの立場から見ても、最初から100点満点の仕組みを頭の中だけで描くのはとても難しいことです。
いざ現場で使い始めてみると、「ここはもう少し入力項目を減らしたい」「このタイミングで通知が来ると助かる」といった気づきが必ず出てくるからです。
kintoneの良いところは、一度作ったあとでも、現場の声に合わせて項目や画面を少しずつ直していけるところにあります。
最初から完璧な設定をつくろうとするのではなく、実際に使いながら直していくことが大切ですね。
たとえば、最初は「支払依頼の受付だけ」を紙からkintoneに変えてみる。
それに慣れてきたら、次は「会計ソフトへ取り込むCSVの形を整えてみる」。
一歩目としては、ここが一番踏み出しやすいと思います。
まとめ|「入力を減らし、考える時間を増やす」ために
ここまで、紙やExcelでの経理業務のお悩みと、kintoneを組み合わせた役割分担についてお話ししてきました。
私たちがkintoneや会計ソフトの連携をご提案するとき、一番大切にしていることがあります。
それは、「連携やデジタル化の目的は、システムをつなぐことそのものではありません」ということです。
本当の目的は、一度入力した情報を二度入力しなくていいようにすること。
「間違えてはいけない」という転記のプレッシャーや、書類を探す時間から現場を解放し、「入力を減らし、考える時間を増やす」ことだと思っています。
数字の背景にある動きに目を向けたり、より良い業務の流れを考えたり、あるいは定時で安心して帰れる日を増やしたりする。
特定の誰かが無理をして「回す」経理から、チームみんなが安心して使える「支える仕組み」へ。
kintoneの活用も、そのための「一つの選択肢として、考えてみてもいいのではないでしょうか」。
無料相談のご案内
Hachidai Lab.では、経理や総務の実務経験をベースに、現場の目線に立ったkintone活用や会計ソフト連携(PCAクラウド連携など)の伴走支援を行っています。
「うちの今のExcelと会計ソフト、どう役割分担するのがいいんだろう?」
「まずはどこから手をつけるのが無理がないかな?」
そんなふうに迷われたときは、連携や導入の方法を決める前の段階からでもどうぞお気軽にお声がけください。
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。今の現場の状況を伺いながら、一番無理のない一歩目を一緒に考えていければ嬉しいです。
Hachidai Lab.(ハチダイラボ)
kintoneを活用した業務改善のパートナー。